今から十年ほど前のことである。私は仕事に嫌気がさし、旅先で野垂れ死んでも良いという思いで一人ロシアを旅行することにした。一人で海外旅行をするのは初めてのことであった。
成田空港の航空会社のカウンターでチェックインして荷物を預け、搭乗券をもらい、空港で両替を済ませた。日本のコンセントが使えないので変換プラグ(ロシアではCプラグ)も買った。
ちなみに、ロシアではバウチャー制度といって、ビザを取得する時に、飛行機とホテルを予約した証明書であるバウチャーを提示することが求められる。初めての一人海外旅行ということもあり手続きが難しいので、航空券やホテルの予約も含めてそのあたりのことはすべて専門旅行会社にお願いした。
さて、搭乗である。飛行機は30分くらい滑走路を走ってから離陸した。千葉は日本のフロリダかもしれない、などと房総半島を少し上空から見下ろしながら思った。
前の座席の背に備え付けられている画面でフライトマップを確認すると、だいたいシベリア鉄道の軌道と同じくらいの場所の上空を通るようだ。テレビなども見ることができた。隣に座った、たぶんロシア人のおじさんは『笑点』を見て爆笑していたが、これから初めて一人で海外に行くという緊張感がそう感じさせたのか、悪魔に憑りつかれた子供のような笑い方だったのでちょっと怖かった。(今考えると、ロシア人にも『笑点』の面白さが伝わっているのが何かすごい。)
ちなみにこれはロシアでテレビ番組などを見て分かったことだが、ロシア人は笑う時はめっちゃ笑う。普段は無表情で公共の場でもふざけたりしない、とても落ち着いた人々だが、ロシアのお笑い番組ではお客さんたちが爆笑してるのが映し出されていたのが印象的だった。
フライト時間は10時間だったが、これからの旅行のことでドキドキしていたのであっという間に過ぎた。エコノミークラス症候群だろうか、若干ヒザを痛めながらも無事に着いた。機内食は2回出た。CAさんが親切だった。日本時間で21時に到着したが、日本とモスクワの時差は6時間なので現地はまだ15時である。(次回に続く)
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